ゆるぎない価値観

「歩いて帰ろうかな、バスで帰ろうかな。歩けば靴もへるし、腹もへる。バスに乗れば10円とられる。はてどうしよう」などと迷うことがよくある。
私生活においての経済意識──最少の経費で最大の効果を求める気持──は、非常に強い。涙ぐましい程に強い。この気持をそつくりそのまま職場の生活にもつてくれば、原価意識となる。

「人、物の使い方にムダがあれば、すぐにその職場の生産物の原価を不当に高めるものであることをいつも気にしていること」これば原価意識の意味である。

紙や鉛筆をおしむ。洗面所の水を出し放しにしない。ムダにつけてある電灯をすぐ消す、さらに現在使つている電話も、皆と話し合つてみたら、半分以下の使用量に減らすことができた、等々、(ただし、ケチンボになるのとは意味が違う。ムダ排除とムリとが混同されるといけない)。

要するに大きなムダを除くと共に、小さなムダをも細心の注意をして除くことに努め、結局、最少の費用で最大の効果を生もうとする経済活動をするのである。つまり、このような経営の本義に徹しなければならないというのは、あながち経営者のみではないというわけである。